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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(新れ)14号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人近藤綸二上告趣意について。

所論は、刑事訴訟規則二二〇條においては、「有罪の判決の宣告をする場合には、被告人に対し、上訴期間及び上訴申立書を差し出すべき裁判所を告知しなければならない」と規定しているから、新刑訴四〇五條の通常の上告手続及び同四〇六條の特別の上告手続についてその上訴期間並びに上訴申立書を差し出すべき裁判所を告知しなければならないにかかわらず、原審においては同四〇六條の上告手続の上訴期間及び上訴申立書を差し出すべき裁判所を告知しなかったのは違法であると主張するのである。しかしながら、同四〇六條の申立は、「上告審として事件を受理すべきことを申し立てること」(同規則二五七條)であって、最高裁判所に対し一種の職権発動を促がすものたるに過ぎない。これに反し、刑訴四〇五條の上告申立は、最高裁判所に対し審判の義務を課するものである。両者の性質はかように著しく異る。前記規則二二〇條によって被告人に告知しなければならぬ「上訴期間及び上訴申立書を差し出すべき裁判所」とは、上告の場合には刑訴四〇五條により審判の義務を課する上告申立に関するものに限ると解するを相当とする。從って、刑訴四〇六條による申立に関しては、その申立期間及び申立書を差し出すべき裁判所を被告人に告知することは、前記規則の要請するところではない。論旨は、それ故に、採用することができない。

されば所論は、明らかに刑訴四〇五條に規定する理由に該当しない、また、同四一一條を適用すべき場合とも認められないから、同四一四條、三八六條一項三号、一八一條により主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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